現在試作中の和文様トートバッグについて
先週発売になったファッション批評誌『vanitas』No.004で、日本の文様を再創造する試論を行いました。
そして、これからは文章による論考だけではなく、手を動すことで新しい文様のあり方を考えて行こう!とも思っています。
現在水面下で試作中なのが、和文様のトートバッグデザイン。
伝統的に使われてきた文様を、その色彩やフォルムをアレンジすることで、現代の生活にも自然に馴染むよう心がけてデザインしています。
3つ程つくったので、少し紹介してみます。
【八重桜トートバッグ】
日本の花と言えば桜!ですが、桜の中でも八重桜は、そのぽてっとしたフォルムや、折り重なった花びらの華やかさが目をひきます。
花びら部分はパステルのバリエーション・トーン+花粉部分はビーズです。
印刷とビーズを組み合わせることで、トートバッグでありながら少しラグジュアリーな雰囲気を目指してもいます。
【折り紙文様トートバッグ】
こちらは、折り紙の星や魚、鶴、朝顔、結び文の文様です。
結び文は、昔の手紙の結び方を象ったもの。松や梅の文様をビーズで縫い込んで華やかにすることで、恋文をイメージしています。
大きなトートバッグは口も大きく開きやすいのですが、付属の組紐のバレッタで持ち手を留めることで、開き具合を抑えることもできます。
【没になってしまった石榴トートバッグ】
石榴をモチーフにした新しいロゴを作ろうと意気込んでつくったのですが、あまりピンとこなかったので、お蔵入りです。
部分部分のビーズの構成は気に入っているのですが…。
(そして作るのも一番大変だったのですが…。)
まだまだ数が少ないのですが、今年中にもっとデザインのバリエーションを増やし、来年には本格的に販売できる形にすることを目標にしています。
日本の文様が新しい形で私達の暮らしに息づくことを理想に掲げ、こうしたデザイン活動も拡大していきたいと思っています。
『vanitas』No.004に寄稿しました。
2015年9月15日発売のファッション批評誌『vanitas』に寄稿させて頂きました。
タイトルは「密やかに生成する文様──現代ファッションにおける日本の文様の行方」。
はるか昔から、日本人は多種多様な文様をつくってきました。
着物や日用品に付されるそうした文様は、季節や吉事を表現する役割をもっていました。
しかし、洋装の流入とともにそうした文様は姿を消しています。
現在の文様は、日本の伝統文化を謳う土産品に付されるか、あるいは単なる記号として消費されているに過ぎないのです。
真に現代に息づく文様とはどのようなものか?
古い文様をただコピーするのではなく、現代の私たちの日常にぴったりと寄り添う文様を考えたい。
そうした思いから、19世紀以降から最新の装飾研究に鑑みつつ、自分なりの試論を展開してみました。
是非ご覧になってください。
amazonでも注文できるようです!
「ロバート・クシュナー 優しさと棘」展
京都、銀閣寺の近くにある白沙村荘 橋本関雪記念館では、現在「ロバート・クシュナー 優しさと棘」展を開催しています。
ロバート・クシュナーという作家を御存知ですか?
日本では、まだあまり馴染みがないかもしれません。
クシュナーは、70年代後半〜80年代にかけて隆盛したパターン&デコレーション(以下P&D)という動向の中心的作家です。
P&Dの作家たちは、世界中の装飾模様を絵画に盛り込んだ絵を描くことに特徴があります。
1970年代までは、世界的に抽象絵画が隆盛していたため、彼らの装飾性の強い絵画は、大きなインパクトと新奇性を持ち、商業的にも大きな成功をおさめました。
今回の展示にあわせて制作された新作《カメリアとサボテン》(2015):吹き抜ける風に揺れる薄布と、描かれた植物と透けて見える景色が美しい作品。舞妓さんも見に来ていました。
P&Dの作家たちは、世界中の装飾に影響を受けていますが、なかでもクシュナー氏は特に俵屋宗達などの琳派の作品に影響を強く受けています。
京都では現在、琳派400周年イベントが行われていますが、そうした影響関係からクシュナー氏の招致も決まったそうです。
2000年以降は、植物を主題とした作品を多く制作。全て2m程のとても大きな作品です。
《シネラリア》(2012):側面は下地の青色で塗られている。
そして、今回、有難いことにレセプションパーティに招いて頂き、クシュナー氏に直接インタビューをする機会も得ました。
パーティーの様子。
以下インタビューの内容です。
これからP&Dの研究をしたいと思っているので、少しお話を聞かせてください。
もちろん。良い研究テーマだね!
P&Dには沢山の作家がいますが、誰か一人が始めたのか、それとも皆で一緒に始めたのですか?
皆で一緒に集って活動したけど、皆を引っ張って行ったのはミリアム・シャピロだったかな。僕が一番若い世代だと思う。
あなたの作品には東洋やイスラムの文字を使った作品がありますが、文字についてはどう考えていますか?
僕には、東洋の文字は読めないんだけど、その形がとても美しいと思って作品に使っているよ。
東洋の文字に影響を受けた作家としては、過去に抽象表現主義の作家がいますね。
フランツ・クラインなんかそうだよね。でも僕は彼らと違って、そうした文字を切り抜いて、画面に直接コラージュする手法をとったんだ。
あなたの他に日本の文化に影響を受けた作家はいますか?
うーん、多分いないかな。僕だけだと思う。
日本ではまだまだ研究が進んでいないので、これから調査したいと思っています。
メールをくれたら、何でも答えるよ!ヴァレリエ・ジャウドン(同じくP&Dの作家)も今ニューヨークで個展してるよ。彼女とも仲が良いんだ。NYにおいでよ!
是非(うれしい)!
日本ではP&Dについての研究はまだ充分に進んでおらず、作品を見る機会もとても少ないです。
そのため今回の展示やカタログはとても貴重なものです。
カタログには、私の指導教官である篠原資明教授も寄稿されており、私の拙論もご紹介頂いております。
この機会に是非展示に訪れ、そしてカタログも覗いてみて下さい!
MY SENCHA SALONのデザインをお手伝いしました。
MY SENCHA SALONさんの、茶器デザインをお手伝いさせて頂きました。
磁器に転写紙と呼ばれるシール状のデザインを貼付けて焼き上げることで、自分だけの茶器をつくることができるという試みです。
第一弾の転写紙は、「金魚、藤、打出の小槌、水仙」で、
春から夏にかけての季節を象徴する文様を現代風にアレンジして盛り込みました。
現在この転写紙は、「転写紙.com」(http://転写紙.com/)さんでお買い求め頂けます。
出来上がった煎茶器は、このような感じ。(写真:MY SENCHA SALONさん)
高台にデザインが入ると素敵ですね。
そして、現在第二弾の制作も始まった模様です!
第二弾は、「鈴、ひょうたん、千鳥と撫子」
淡い色合いで季節関係なく、お使い頂けると思います。
MY SENCHA SALONさんでは、煎茶体験とともに、茶器制作ができるワークショップも開催しています。
先日、その茶器制作の際の画像がMY SENCHA SALONさんのinstagramに挙げられていたので、引用させて頂きます。
仕上がりがとても楽しみです!
詳細やご購入などは、「MY SENCHA SALON」さん公式HPからどうぞ〜!
NY日記〜番外編・何となく忘れられないこと〜
その日から、本格的な研究調査が始まるので
とても緊張していた中、彼には勇気をもらった。
でもこんなマンガ描いている場合じゃない。
NY滞在③〜エンパイア・ステート・ビル〜
滞在三日目あたりで誕生日を迎えたので、高い所に行こう、、と思い立ち、
朝8時にエンパイア・ステート・ビルに向かいました。
日本でも名の知れた大企業に務める人々の朝は早い。
歩くのも早い。女子は皆コーヒー持ってる。
エンパイアの最上階(102階)は442mだそうですが、あいにく最上階は工事中とのことで、86階(381m)まで登ってきました。
中国人とわたし、というマンハッタンで一番高い空間。
新調したカメラは望遠が優れていたので、しばらく一人で遊んでいました。
自然も好きですが、徹底してつくられた人工物群もまた面白い。。
お昼からは、やらなければならない原稿があったので、
バゲットを買ってホテルに戻り、ひたすらパソコンと向き合う。
途中で市立図書館へ調べものにも行きました。
重厚な天井画は、ニューディール政策(1935-43)の際に、若い芸術家たちの雇用促進の一環として作られたとのこと。
作者はMcgraw Rotunda。
夜は終わらない仕事と向き合いながら一人で乾杯。
サングリア一杯で2000円とられる街、それがニューヨーク。
NY滞在②〜ホイットニー美術館篇〜
先日『bitecho』にて、新しく移築したホイットニー美術館についての記事を書きました。
今回は、記事内で紹介できなかった情報などについて書いて行きます。
10:30の開館に合わせて美術館に向かったのですが、既に長蛇の列。
おそらく200人は並んでいたと思いますが、会場が広いので、混み合って作品が見れない!ということはありません。
熱心なおばさまたち。
屋上からはNYが一望でき、南端のワールドトレードセンターもはっきりと見えます。
風が強いので、帽子などは要注意。
そして肝心のコレクション。
『bitecho』の記事では、ミニマル、ポップ・アートに触れましたが、研究範囲である抽象表現主義界隈も、一級品のオンパレード。50-60年代のアメリカのパワーに触れました。
それから、ドナルド・モフェットの作品にデイヴィッド・サーレの作品が重ねられていたのですが、意図がわかりませんでした。何かあるのでしょうか。
モフェットの作品は、ロナルド・レーガン大統領のエイズ政策のずさんさを批判したもの。
==NY装飾篇②==
メアンダー(雷文)の力技的使い方
こちらは純粋に美しくて見とれた組紐系模様。
NY滞在①
7月に調査のためにNYに滞在していたので備忘録など。
成田を朝の11:00に出発し、NYには昼の12:00くらいに到着。
現地に到着して最初のホテルは、ミッドタウンにある、ダブルツリーbyヒルトン。
かの有名な、マリリン・モンローのスカートがめくれるシーンは、このホテルの前で撮影されたとか。
室内は広々としていて、装飾もモダンでした。ただ冷房が寒い。調節ができない。
初めてNYにいった時に、語学学校の先生が、「NYはワンダフル・パーフェクト・シティ!」と説明してくれたのですが、ベッドの上にNYの写真が誇らしげに飾ってあるのをみて、それを思い出しました。
季節はセールシーズン。街中にはここぞとばかりに買い物袋をぶらさげて歩く女子たちがたくさん。
私は着いて早々、道ですれ違った黒人のおじさんに大声で怒鳴られて(何もしてないのに)、心臓が石のようになり、この日は何も買いませんでした。
==NYの装飾篇①==
ヨーロッパ調の装飾が多いのですが、ところどころ変なものが混じっていて面白いNY装飾。
まだまだ続きます。
パノフスキー『イコノロジー研究』を文様の観点から考えてみる。
今ではすっかり、美術史のスタンダードとなっているパノフスキーの『イコノロジー研究』ですが、文様解釈についてもヒントになりそうだと思ったのでメモしておきます。
ドイツ生まれのエルヴィン・パノフスキーが『イコノロジー研究』を書いたのは、1939年のことです。それは主として一個の美術作品をどのように分析し、解釈するか、という問題にあてられます。序章でその方法が具体的に示され、それ以降はルネサンス美術の例などを中心に分析が行われていく、といった感じでしょうか。
序章示される具体的な分析方法は以下の通りです。
パノフスキーは、美術作品を分析する時に、三つの段階を想定します。
第①段階・自然的主題
この段階は、絵画などを見たときに、何の予備知識がなくとも感覚できるもののことを指します。つまり、ここには人間が描かれている、植物が生えている、建物が書かれている。そしてまたこれは油絵の具が用いられている。人物の表情は悲しげである、と言ったような感じです。
第②段階・伝習的主題
伝習という訳語が少し分かり辛いですが、ようは人物が小刀を持っていたら、それは聖バルトロマイを描いている、といったような、ある宗教や集団にとってはお決まりのモティーフやテーマのことを指します。小刀というモティーフを見ただけで、知っている人は、それにまつわる物語や意味を想起できます。
第③段階・内的意味・内容
これは作品が制作された当時の時代状況や国家、宗教や階級意識といった状況と作品を照らし合わせることを指します。当然そこには作者が意識せずに表現したものが含まれます。パノフスキーの説明によれば、例えば、ミケランジェロが青銅ではなく石を偏愛したという事実から、ミケランジェロの人格まで分析することを示しているようです。
現在の美術史研究において、こうした分析は既に当たり前のように行われています。しかし、「文様」という表現様式に対して、この分析はいかに当てはまるでしょうか?
たとえば、最も有名な文様として、葵文様をとりあげてみましょう。
第①段階・自然的主題でわかること
・植物を描いている
・抽象化、単純化されている
・絵というよりは記号に近い
などなど
第②段階・伝習的主題でわかること
・古来から葵を文様としているのは、京都の賀茂一族である
・賀茂一族を表す葵は二枚の葉を持つ。
・一方で、三枚の葉を持つ葵は、徳川家の文様である
などなど
第③段階・内的意味・内容でわかること
【お守りに葵文様が描かれている場合】
・文様を入れることで、ただの布袋が…あら不思議
【庶民が葵文様を描いていた場合】
・江戸時代には、徳川家とその家臣以外が三枚の葵文様を使うことは禁止されていたため、描いた人物は、徳川家に反発する精神を持っていた、あるいは法令に関して無知であった
などなど
ここまで、考えてみて気になったのが、じゃあ現在において、文様を描くことってどんな③内的意味・内容を持つことになるのか?ということです。
単純に考えれば、現在において文様を描く人は「日本伝統が好きな人」と受けとられるでしょう。あるいは、徳川家の熱烈なファン、下・上鴨神社(京都)を熱烈に信仰している人であるとか。
なんだかとてもうっすーい内的意味・内容です。
何が言いたいかというと、今現在、「文様」が持つ意味が希薄になっているということです。そして文様を活用する機会も、意味の希薄さとともに失われていっている。
文様というものは、日本人がながーい時間をかけて作り上げていったシンボルであり、漢字やひらがなといった記号と同じように価値を持つものではないでしょうか。
ということで、現在において文様の新たな意味を見つけること、このことについてしばらく考えてみたいと思ったのでした。
以上です。
私が読んだのは、ちくま学芸文庫(上・下)版。2002年に出てます。
- 作者: エルヴィンパノフスキー,Erwin Panofsky,浅野徹,塚田孝雄,福部信敏,阿天坊耀,永沢峻
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/11
- メディア: 文庫
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サントリー美術館に行って来ました。
今回の企画展は「天才陶工 仁阿弥道八」展でした。
お恥ずかしながら、仁阿弥道八(にんなみどうはち)のことを今回の展示で初めて知りました。1783年生まれ1855年没、江戸時代の後期に京都で活躍した陶工です。
その作風は、展覧会ポスターにある通り「のびのびと、まじめに」。
器の1つ1つに、伝統的な日本の文様が描かれているのですが、どれも型にはまることなく、非常にのびやかに描かれています。フォルムも位置も不揃いなのですが、それゆえに道八の線を引くスピードや息づかいを感じることができます。
また道八の陶器の中で特に有名なのが、煎茶道具です。
18 世紀後半から19世紀にかけて、文人たち(身分は職業を問わず、学問を修め、詩文をよくする人)たちの間で煎茶道がおおいに流行しました。その需要に応え るべく、道八は煎茶碗や急須などを数多く制作します。その出来が大変良かったため人気を博し、地方では道八を模した作品も多く制作されたそうです。
個人的に興味深かったのは、置物や香炉、手焙(てあぶり)といった、少し大きめの作品群です。
動物や人間をかたどったものが多かったですが、フォルムからも、造りからも溢れだすユーモア。おじいさん、煙でてますよ。
実はこの道八家、現在も京都で陶器を作っています。仁阿弥は2代目で、展覧会には、現在の9代目の作品も展示されていました。
サントリー美術館は六本木のミッドタウン内にあるのですが、六本木は何度行ってもおかしい。
鞄が欲しいと思って、何気なく棚にある鞄を取ったら、
おかしい…おかしい…
以上です。